『半身』サラ・ウォーターズ作!サマセット・モーム賞受賞作の感想

『半身』サラ・ウォーターズ

『半身』は、1999年にサラ・ウォーターズが発表したサスペンス小説です。

サマセット・モーム賞、アメリカ図書館協会賞、

サンデー・タイムズの若手作家年間最優秀賞を受賞した

非常に魅力的な作品『半身』のあらすじと魅力をご紹介します。

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あらすじ

1874年秋、ロンドンのミルバンク監獄を資産家の令嬢

マーガレット・プライアが慰問に訪れた。

門をいくつも通り抜け、

曲がりくねった小径をたどった奥にある石の迷宮ミルバンク監獄。

暗く湿った土がすえた匂いを発し、壁は狂気か悪夢のように人に迫ってくる。

そのミルバンク監獄でマーガレット・プライアは、

不思議な静けさに包まれた女囚シライナ・ドーズと出会う。

監獄に不似合いなシライナの上品な佇まいに

好奇心と哀れみを感じるマーガレット。

慰問に通う内に次第に親しくなる二人。

やがて、シライナの周囲で不思議な出来事が次々に起こり

マーガレットはシライナの霊的な力を次第に信じるようになっていく。

ヴィクトリア朝の闇

まだ電気がない暗闇の時代です。

ミルバンク監獄での中世のような厳しい囚人の生活が生々しく描かれ

陰鬱で重苦しい舞台背景となっています。

ヴィクトリア朝の時代には、

科学が段々と人々の心から迷信を追い払い始めた時代ですが

まだまだ古い俗信が日々の生活の中で息づいています。

例えば、ヴィクトリア朝時代を生きたコナン・ドイルが

神秘主義者だったのは有名な話ですよね。

物理的にも精神的にも闇に包まれていた、

そんな時代をリアルに感じることが出来ます。

謎をちりばめたスリリングな展開

冒頭でシライナの罪状は「詐欺と暴行」という風に、

ざっくりと明らかにされるだけで、詳細は明らかにされません。

小説は、シライナの1973年の日記とマーガレットの1974年の日記が

平行して記述してある形式になっていて

ラストまで詳しいことは持ち越され、謎の多い展開になっています。

加えて、複数のスリリングな仕掛けが巧みに織り込まれていて

読者をラストまで引き付けて離しません。

主人公マーガレットの感じた閉塞感

主人公のマーガレットは未婚の29歳。

三十路を直前して本人も周囲も軽い絶望を感じています。(;^_^A

マーガレットって、自他ともに「老嬢」って呼ばれてるんだけど、

29歳で「老嬢」って結構ショッキングな表現ですよね(^o^;)

時代もあるかもだけど。。。

原作がどういう単語を使ってたのか分かりませんが、地味に衝撃でした(笑)。

で、そんな老嬢マーガレット、

保護者であり理解者であった父親を亡くし、伝統的価値観に固執する母親と衝突し、

次第に追い詰められていきます。

恋人には裏切られ、妹も弟も先に結婚して幸せな家庭を築き、

自分だけが取り残されていくように感じてしまいます。

更に当事犯罪とされていた同姓愛者ということになると、

その絶望たるや、彼女が自殺を図ったのも無理はありません。

ちなみに、自殺も当時のイギリスでは犯罪です。まさに、八方塞がりの袋小路…。

そして、マーガレットは閉塞的な現状から一気に解放されることを夢見て

一発勝負の賭けに出るんだけど、

その賭け、勝率めっちゃ低いっつーか、賭けたらアカンやつやで(;^_^A

もう何やってんねん…と思いつつ、睡眠不足になりながらも

ついついラストまで読んでしまうんですよ。

マーガレットって、同情してしまう所がいくつもあるし、共感できる所もあるので

そういう部分もこの小説の魅力だと思います。

ま と め

ヴィクトリア朝時代を背景にして、囚人を見舞うという地味なストーリーではあるけれど、

ミステリアスでスリリングな仕掛けが一杯で、

最後まで目が離せない素晴らしいサスペンスの秀作です。

きっとご満足いただけると思います。


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