今回はスティーヴン・キングの『ビッグ・ドライバー』をご紹介します。
この本『ビッグ・ドライバー』には、
中編小説「ビッグ・ドライバー」と「素晴らしき結婚生活」が収録されています。
「ビッグ・ドライバー」
あらすじ
作家テスは講演旅行に車で出かけた。
講演会場で会った講演主催者のノーヴィル女史は、
帰りの道順について、田舎の近道を教えてくれた。
しかし、テスはその帰り道で男に襲われ殺されそうになる。
テスは復讐を誓うが‥‥。
感想レビュー
テスの苦悩と混乱、そして、狂気が
リアルに伝わってくるスリリングな迫力満点のホラー小説です。
殺人犯がテスを死んだと思って、
他の腐乱死体と一緒に古いパイプに押し込むシーンとか、鳥肌ものです。
古いパイプ中で、テスは必死に死んだふりをしながら、
「背中のくぼみに感じるぐちゃぐちゃの腐った」何かの感触や、
死体の上をはい回る虫を我慢します。
そんな夜を過ごしたら、
車のナビが、殺人の共犯者をほのめかす声が聞こえてきても無理はないのでは?
復讐をそそのかしてきても、理にかなっていると思ってしまうのでは?
とにかく
人間の理性が危うい綱渡りをしている様子を描いた恐ろしい小説です。
テレビ映画「ビッグ・ドライバー」
この小説「ビッグ・ドライバー」は、2014年テレビ映画化されました。
タイトルは同じ「ビッグ・ドライバー」です。
こちらは復讐劇というアクションの側面に重点が置かれています。
原作のような細やかな心理描写はありません。
でも、ストーリーをシンプルにした分分かりやすくなってますし
人違いの殺人かと思ってゾッとするシーンや、
意外な共犯者などの展開(原作通り)が面白いので、楽しめる映画になっています。
「素晴らしき結婚生活」
あらすじ
ダーシーは、結婚して27年。ボブとのこれまでの夫婦生活は円満だった。
ある日ガレージで、古い献血カードや運転免許証など複数のカードを見つけるまでは。
運転免許証の持ち主は、殺人の被害者として新聞やテレビでみたことのある女性だった。
夫は連続殺人犯だったのだ。
子どもたちのこと、被害者のこと、更に次の被害者が出る可能性など、
色々考えた末、ダーシーは夫を殺すことにする‥‥。
感想レビュー
著者あとがきによると、
現実のデニス・レイダー事件に着想を得て、書かれた小説だそうです。
デニス・レイダーは「有名なBTK(緊縛・拷問・殺害)殺人鬼で、
おおよそ16年にわたって」子どもを含む10人の命を奪ったそうです。
そして、デニスの妻は「なにも知らなかった」と言っているとか。
実際にデニスの妻が共犯だったかどうかは分かりませんが、
スティーヴン・キングは妻が夫の犯罪を知らなかったということもありうると思って
この小説を書いたそうです。
外面の良いボブのサイコっぷりがえげつないです(笑)。
「ファミリー・シークレット」というタイトルでテレビ映画化
2014年、脚本もスティーヴン・キングでテレビ映画化されました。
タイトルは「ファミリー・シークレット」です。
他の方のレビューを見ると、
原作未読のまま見た場合、多少分かりにくい部分もあるようです。
原作を読んでから見た方が理解しやすいと思います。
州検事総務局のホルト・ラムジーの描きかたが、
原作と映画では異なっています。
原作では登場シーンがわずかだったけど
映画では登場シーンが増えてより味わい深いキャラになっています。
ま と め
どちらの作品も、暴力的で悪魔的な殺人者と
被害にあった女性の痛みと復讐が描かれています。
そして、両作品とも、主人公の苦悩に寄り添うキャラクターが存在します。
彼らは、被害者の痛みを理解し、復讐という罪に対して許しを与えます。
被害者に対するキングの優しい思いやりが感じられる作品です。
※最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
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