『ドロレス・クレイボーン』スティーヴン・キングのホラー小説の感想レビュー

「ドロレス・クレイボーン」

スティーヴン・キングの『ドロレス・クレイボーン』をご紹介します。

高齢の女性が30年前の夫殺しを告白するホラー小説です。

苦難の多い人生を懸命に生きている女性へのキングからの応援歌です。

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あらすじ

雇い主のヴェラ・ドノヴァンが事故で亡くなったとき、ドロレス・クレイボーンは、警察にヴェラを殺した疑いをかけられます。

警察に出向いた彼女は、ヴェラとの長い間の複雑な関係を語ると同時に、30年前の夫殺しを告白します。

30年前の1963年夏…

夫の暴力・アルコール中毒、貧困。そして、夫が娘への性的暴行を繰り返していることを娘から聞くに及び、とうとうドロレスは心が折れそうになっていました。

彼女の悩みを聞いたヴェラは

「事故というのは時には不幸な女の味方になることがあるのよ」

とつぶやきます。ヴェラの夫も事故死していました。

ドロレスは夫を殺す決心をし、皆既日食の午後、ドロレスは夫を野原におびき出し…。

ドロレス・クレイボーンの一人語り

ラスト4ページ以外は、最初から最後まで、主人公ドロレス・クレイボーンが、警察で供述しているという一人語りのスタイルになっています。

一人語りのスタイルで長編を書くって、下手をすると途中で中だるみになったり、全体の流れが乱れたりすると思うんですけど、さすがスティーヴン・キング!!!

約350ページの最後まで、息つく暇がありません。

文字通り、最高のストーリーテラーです!

なお、この『ドロレス・クレイボーン』は、スティーヴン・キングの『ジェラルドのゲーム』とリンクしているので、もし『ジェラルドのゲーム』が未読の方は、ぜひ『ジェラルドのゲーム』も読んでみてください。

テイラー・ハックフォード監督で映画化。タイトルは「黙秘」

1995年テイラー・ハックフォード監督で映画化されました。

映画タイトルは「黙秘」です。

小説が、ドロレス・クレイボーンと彼女の雇い主ヴェラ・ドノヴァンに焦点を置いているのに対して、映画は、ドロレスとドロレスの娘セリーナに焦点を置いています。

つまり、映画は母子の物語になっている点で、小説とは全くの別物になっています。

映画のメインキャストは

ドロレス・クレイボーン:キャシー・ベイツ

セリーナ・セント・ジョージ(ドロレスの娘):ジェイファー・ジェイソン・リー

ヴェラ・ドノヴァン:ジュディ・パーフィット

ジョー・セント・ジョージ(ドロレスの夫):デヴィッド・ストラザーン

ジョン・マッケイ警部:クリストファー・プラマー

となっています。

映画「ミザリー」同様、キャシー・ベイツの演技が光っています。

ネタバレ(↓↓↓)

以下ネタバレですので、ネタバレ大丈夫な方のみ、文字の色を反転させてお読みくださいね。

皆既日食の日、ドロレスに野原のおびき出され、古井戸に落ちたジョーはドロレスに殺されます。

ヴェラとドロレスは奇妙な共犯者となります。

その後、ヴェラは子供たちを事故で失い、ドロレスも三人の子供のうち一人を亡くし、残りの二人とは疎遠になります。

やがて歳を取ったヴェラとドロレスは身を寄せ合って生きていきました。

そして、体が不自由になり認知症を患ったヴェラは、自分で自分の人生に幕を引きます。

ドロレスは最後までヴェラを支えて、ヴェラを見送ります。

ラストの

「最後まで持ちこたえるのは、この世の性悪女たちだよ」

というドロレスの言葉が心に響きます。

キングからの、頑張っている全ての女性たちへのエールに胸が熱くなります。

困難にくじけず、生きる力が湧いてくる本です。

ま と め

苦労の多い人生を送った二人の女性の絆を描いた物語です。

スティーヴン・キングのリアルで緻密で圧倒的な表現力で、一気に最後まで読ませます。

女性みんなに勇気をくれる力強い小説です!!!

※最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

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