『箱の中』木原音瀬の獄中ボーイズラブ小説のあらすじ、感想レビュー

箱の中

今回は木原音瀬の『箱の中』をご紹介します。

タイトルの『箱の中』とは、刑務所の中のこと。

刑務所を舞台にしたボーイズラブ小説です。

昔『ダ・ヴィンチ』でBL界の芥川賞と言われた作品。

kindle版には、本編「箱の中」の他、番外編「脆弱な詐欺師」と

続編「檻の外」の合計3編を収録しています。

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あらすじ

堂野崇文は、駅で痴漢と間違われ、逮捕されます。

全く身に覚えのない堂野は無罪を主張するけれど、信じてもらえず

結局裁判で負けてしまいます。そして、

一貫して無実を主張し続ける堂野に対し裁判長は

「反省の色がない」として2年の実刑をいいわたしました。

監獄の雑居房での生活は厳しい規律と、プライバシーのない毎日で

真面目で大人しい性格の堂野を追い詰めていきます。

次第に「死にたい」と思うようになる堂野。

ある日の夜中、精神が錯乱していく中でつい「助けて」と口走ります。

すると、同房の喜多川にそっと頭を撫でられます。

その手のぬくもりに少し救われた気がした堂野は、次の日

喜多川に礼を言います。しかし、喜多川から返ってきたのは

「どうして俺にありがとうって言うの?」

という返事で‥‥。

殺人罪で服役中の無口な受刑者 × 冤罪ヘタレ受刑者

年下攻め。一途な喜多川 × 優柔不断な堂野。

喜多川は、ずっと母親から虐待されていたため、

一部感情が欠落しているようなことろのある人です。

無口でほとんどしゃべらず、自分から他人と関わろうとしないタイプ。

最初は取っつきにくく、どこか底知れない気味悪さを感じます。

でも、読んでいくうちに、

喜多川の心の内側にある純粋さにはっと驚かされます。

一方、堂野はふらふらと周囲の状況に流されるヘタレ。

流され流されて一体どこまでいくんやーー?!と不安になります。

でも、こういう悪気のない流され星人って結構いるかも(^_^;)。

柴田よしきの麻生シリーズの麻生にちょっと似てない?

まあ、麻生の場合は、しっかりもののビッチな練ちゃんが

パートナーだからまあ良いけど(良くない?www)

喜多川は赤ちゃんみたいな人やから、なんか可哀想ーー( ;∀;)。

ふびんーーー!!!

あ、でもそんな堂野だからこそ、変わらない一途な思いを

持ち続けることができる喜多川に惹かれたのかもね。

同時収録「脆弱な詐欺師」

あらすじ

「脆弱な詐欺師」は、出所してから5年後の喜多川を描いた短編。

必死で堂野を探す喜多川は、自力で探すことに限界を感じ、探偵に堂野探しを依頼。

そのための費用を昼夜働くことで捻出するが、体を壊してしまいます。

ところが、それだけ頑張って働いても、探偵である大江は金を受けとるだけで

堂野探しをするつもりはなく‥‥。

感想レビュー

「脆弱な詐欺師」は、大江からの視点で書かれた小説です。

懸命に堂野を探す喜多川が痛々しい(T-T)

塀の中であったことは、特殊な環境故のことで、

塀の外ではまた状況が違ってくる‥‥

というのが喜多川には分からない( ;∀;)

そんな唯一無二の飼い主を慕うワンコのような一途さ‥‥

いやワンコというよりもヒナの「刷り込み」に近いかな。

ヒナが初めて目にしたものをひたすら追いかけるように

堂野を追い続ける喜多川。

なんかもう、いたたまれません~(T-T)

誰かなんとかしたってや~~~!

ということで、この話の続きは、続編『塀の外』に繋がっていきます。

続編「檻の外」

あらすじ

出所から5年後、やっと堂野を見つけた喜多川は、堂野の近所に引っ越してきます。

再会は嬉しいが、複雑な心境の堂野。

堂野には妻子がいたのです。

「あんたに家族がいたって、近くにいるぐらいいいだろ。

同じ雨の降っている場所にいるんだって思うぐらいいいだろ。」

喜多川の言葉に胸を揺さぶられながらも、堂野は少し怖くなります。

喜多川の思いは今の自分には重すぎます。

二人がお互いに納得できる距離感を手探りしている時、

堂野の子どもが行方不明に‥‥。

感想レビュー

「檻の外」は、サスペンス小説になっています。

子どもの失踪。容疑者の捜査。

人間のえげつない悪意がストレートに表現されている部分もあるので

気楽に読むことはできません。

ネットのレビューを見ると、賛否両論になってるみたいです。

子供の失踪とかが地雷な方はやめた方が良いかも。

ちなみに、紙の書籍の『檻の外』には、「檻の外」の他

「雨の日」「なつやすみ」も収録されています。

そちらも読みたい方は、紙の書籍をどうぞ。

「雨の日」「なつやすみ」は、「檻の外」の後の

主人公二人の穏やかな生活を描いた短編です。

「雨の日」は花火を見に行くために二人で浴衣を買いに行く物語。

「なつやすみ」は、小学3年生になった堂野の戸籍上の子どもが

46歳の堂野と44歳の喜多川を訪ねてくることから始まって、

その後約10年位の間のストーリー。

「檻の外」が辛い内容だったので、「雨の日」と「なつやすみ」に救われます。

幸せそうな喜多川の姿が見られますよ。

「雨の日」は、20ページ、「なつやすみ」は90ページほどの商品ですが

「檻の外」を読んで疲れた心に癒し効果抜群です!

▼紙の書籍『檻の外』

kindle版には、「雨の日」「なつやすみ」は収録されていませんので

ご注意下さい。

ま と め

「箱の中」は、刑務所を舞台にした、重めのボーイズラブ小説です。

「箱の中」「脆弱な詐欺師」「檻の外」を収録しています。

軽い気持ちでさくっと読める作品ではないですが、

ピュアでまっすぐな愛に触れることができます。

最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

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