『日の名残り』ノーベル賞作家カズオ・イシグロの名作の感想レビュー

今回はカズオ・イシグロの『日の名残り』をご紹介します。

カズオ・イシグロは日本生まれのイギリスの作家です。

イギリスでその年出版された長編のなかで最も優れた文学作品におくられる

ブッカー賞を、この作品『日の名残り』で1989年に受賞。

ブッカー賞は、イギリスの権威ある文学賞です。

2017年にはノーベル文学賞を受賞しました。

カズオ・イシグロの作品は色々ありますが、

カズオ・イシグロを初めて読む方は、

まず『日の名残り』から始めるのがよいかと思います。

『充たされざるもの』など、シュールな不条理もののファンタジーや、

陰鬱な『遠い山なみの光』(『女たちの遠い夏』改題)よりも親しみやすいと思います。

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あらすじ

1956年7月、ダーリントン・ホールの執事スティーヴンスは、

しばらく休暇をとり、ドライブ旅行に出かけます。

美しいイギリスの風景を堪能しながらの単独旅行は、

彼にこれまでの人生を振り返る時間ときっかけを与えました。

執事の仕事へのこだわり、若い日の淡いロマンス、館を取り巻く情勢、

過去の輝かしい日々を思い返すことは安らぎであり喜びでした。

しかしやがて、敬愛していたダーリントン卿の苦悩と死に対する深い悲しみ、

また悔恨など、様々な苦い想いが表面上に浮かび上がってきます‥‥。

主人公スティーヴンスによる旅日記、5日目が抜けている理由

この小説はスティーヴンスが書いた旅日記、という形式になっています。

旅に出ることになった経緯から始まって、旅の終盤までが描かれています。

最初はよそよそしくて、堅苦しい筆致ですが、

段々とスティーヴンスの内面が現れてきて、最後では赤裸々な感情の吐露がなされます。

ダーリントン卿の死のいきさつは終盤まで明らかにはされず、

ミステリのようなスタイルになっています。

全体のストーリーは地味で起伏が少ないと言えるかもしれませんが、

スティーヴンスの現在の時間軸と往時のダーリントン・ホールの時間軸が平行して、

ミステリアスに語られていくので飽きずに楽しく読むことができます。

スティーヴンスの旅日記は、一日目、二日目、三日目、四日目、と続き、

5日目が抜けて、6日目で最後になっています。

5日目が抜けている理由はきっと、4日目にミス・ケントンと再会したので、

筆を休めて、気持ちの整理をしようとしたからなのかな、と思います。

斜陽、夕暮れに惹かれる作家カズオ・イシグロ

カズオ・イシグロの短編集『夜想曲集』には、

魅力的な夕暮れが繰り返し書かれています。

本作『日の名残り』のラストにも綺麗な夕暮れのシーンがあります。

カズオ・イシグロは夕暮れに惹かれる作家のようですね。

本書のタイトルも『日の名残り』だし(笑)。

夕暮れには、癒しと安らぎを感じさせるものがあります。

本書の終盤、自分の人生を悔やむスティーヴンスが旅先で出会った男性に

「いつも後ろを振り向いていちゃいかん。夕方が一日で一番いい時間なんだ」

と慰められる場面があります。

夕方というのは、作品中にある通り、

「足を伸ばしてのんびりする」ことができる素晴らしい時間かもしれません。

人生の晩年がこういう穏やかな安らぎの時間だと良いですね。

1993年ジェームズ・アイヴォリー監督で映画化

主演は、アンソニー・ホプキンス(スティーヴンス役)で映画化されました。

ダーリントン卿は、ジェームズ・フォックス

ミス・ケントンはエマ・トンプソン、

ファラディはクリストファー・リーブというキャスティングです。

若くて綺麗な頃のヒュー・グラントもちょっぴり出演しています。

イギリスの美しい田園風景、歴史ある古い邸宅など、

壮麗な映像美で飾られた印象に残る映画です。

大筋は原作通りで、原作の雰囲気をよく伝えています。

ま と め

イギリスの邸宅での出来事と貴族と執事を描いた美しい小説です。

静かで穏やかな筆致の味わい深い傑作です。

失ったものへの哀愁と癒しと安らぎが感じられ、

じんわりと感動が全身にしみわたります。

どうぞご一読ください。

※最後まで読んでいただいて、ありがとうございました(^▽^)。





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