『浮世の画家』ノーベル賞作家カズオ・イシグロの長編小説の感想レビュー

今回はノーベル賞作家カズオ・イシグロの『浮世の画家』をご紹介します。

第二次世界大戦終戦後、これまでとは価値観が逆転する社会の中で

自分の居場所を見つけることができない老人の混乱と憔悴を描いた小説です。

1987年ウィットブレッド賞受賞作。

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あらすじ

1948年10月、「わたし」は引退した画家として、

次女紀子と一緒にのんびりと暮らしています。

かつては画壇に名を馳せた「わたし」でしたが、戦後世の中はすっかり変わってしまいました。

去年、紀子の縁談が急に破談になったことを、娘たちは気にしているようです。

長女の節子は、戦時中の「わたし」のある行為が

破談の原因ではないかと疑っているようです。

戦争中、私は戦争を美化し、当時の日本政府に迎合する絵画を描いていました。

今ではそういうことは、人々から激しく非難されています‥‥。

信用できない語り手という手法

主人公が過去を振りかえって一人称で語るというスタイルは『日の名残り』や、『遠い山なみの光』(『女たちの遠い夏』改題)と同じ。

※『日の名残り』の紹介記事はこちらです

※『遠い山なみの光』の紹介記事はこちらです

そして、『遠い山なみの光』同様に、主人公の言うことは矛盾していて、

その場その場でコロコロ変わります。

『遠い山なみの光』では、それが夢のような幻想的な雰囲気をかもし出していたけれど、

『浮き世の画家』の場合、主人公が高齢なので、幻想的というよりは、

「おじいちゃん認知症?」という印象もなきにしもあらず(^_^;)

主人公「わたし」のキャラクター

この小説を読んでいると、独りよがりでプライドが高く、

人を見下すところがあって、実に鼻持ちならない

天狗な「わたし」にいい加減うんざりします(^_^;)。

女性は「男のプライド」をもっと尊重すべきなんだとか、言っちゃうし(笑)。

でも、この主人公、偉そうに言う割には、

実際には、娘たちに頭が上がらない父親で

周囲からも煙たがられています。

彼が何度も何度も自分の名声をこれみよがしにひけらかすのは、

本当は自信がないから。そして、とても傷ついているから。

戦後、価値観が激変して、社会の変化に順応することができず、

自分に価値を見いだすことができません。

「画家として世に認められている」という妄想の中で生きることで

辛うじて自分を救おうとしている無力な老人と言えるでしょう。

ま と め

戦争による家族の死、戦後の混乱、貧困、価値観の激変、

そういうものに翻弄され、自分を見失った哀れな老人と、

そんな人々へのカズオ・イシグロの同情が感じられる小説です。

1987年ウィットブレッド賞受賞作品でもあります。

最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。、





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